ローンの基礎知識
家を買う時には住宅ローンがつきものです。でも、数千万円のローンをどう借りてどう返せばいいのか、戸惑ってしまうのも無理はありません。買った後に住宅ローンで困らないために、資金計画の基本となるポイントを理解しておきましょう。
*下記のローン金利、各種税金等はすべて平成17年7月1日における概算です。
  金融機関、税務署等に最新の情報をご確認くださいますようお願いいたします。
1.資金計画「基礎の基礎」
 頭金は価格の2割以上
 住宅購入では価格の全額を住宅ローンで借りるのではなく、一部を頭金として手持ち資金から払うのが一般的です。頭金は通常、価格の2割以上用意するものといわれています。つまり住宅ローンで借りるのは価格の8割以下です。不動産会社によっては8割を超えても借りられる提携ローンを用意しているケースがありますが、借り入れが多いと返済負担が重くなります。今は低金利時代。頭金を貯めている間に金利が上がってしまうと結局負担増になるので、親の援助などで2割の頭金を確保したいものです。
 頭金のほかに諸費用も
 購入時には頭金だけ用意すればいい訳ではありません。売買契約から引渡までには各種税金や保険料、手数料などの諸費用がかかります。諸費用の額は物件によりますが、新築住宅で価格の3%〜6%程度、中古住宅で6%〜10%程度が目安です。これらの諸費用は頭金と同様、手持ちの資金から現金で支払うのが原則です。つまり、頭金とあわせると価格の23%〜30%程度は必要になる計算です。仮に4,000万円の家を買うとすると、1,000万円から1,200万円程度を自己資金として用意しなければなりません。

●家を買うのに必要なお金は?
 いくら借りられるのか計算してみよう   「借入額+頭金」が買える家の価格
いくら返せるかを考える
 自分はいくらの家が買えるのか、購入予算を考えるには、まず住宅ローンをいくら借りられるかを知る必要があります。さらにいくら借りられるかは、ローンを月々(ボーナス時も含めて)いくら返せるかに左右されるのです。返せる額は、「今の家賃+住宅購入用の月々の貯蓄額」から求める方法と、「年収×年収負担率」から計算する方法があります。
100万円あたりの返済額から計算
 返せる額から借りられる額を計算するには、借入額100万円当たりの返済額を使います。100万円あたりの返済額は金利と返済期間が分かれば計算できますが、早見表で見つけるのが早道です。計算式は[返せる額÷100万円当たりの返済額×100万円]。毎月分とボーナス分とに分けて計算します。
 借りられる額が計算できたら、毎月分とボーナス分とを合計し、頭金を加えれば「買える額」になります。例えば毎月返せる額が8万円、ボーナス時に返せる額が15万円とした場合、金利2.375%、35年返済で借りられる額は毎月分が2,280万円、ボーナス分が710万円。これに頭金750万円として合計すると、購入予算は3,740万円です。

●買える価格の計算方法

※頭金は購入可能額の2割以上
借りられる額の計算方法 (金利2.375%、35年返済の場合)
<毎月分>
<ボーナス分>
※10万円未満切捨て
            
 早見表から「買える価格」を見つける
 返せる額が分かれば下の早見表で買える価格が見つかります。返せる額を年収から求める場合、年収負担率は25%以内としましょう。例えば年収600万円で年収負担率25%なら年間返済額は150万円。毎月返済額10万円ならボーナス時加算額は15万円(1回当たり)。
2.ローンの種類
利用できる融資
 住宅ローンには大きく分けて公的融資と民間ローンの2種類があります。公的融資としては公庫融資のほか、財形貯蓄をしているサラリーマンが利用できる財形住宅融資、自治体が提供する自治体融資などが挙げられます。一方、民間ローンを扱っている金融機関は都市銀行や信託銀行、信用金庫など様々です。また、公庫と民間のタイアップである証券化ローンもあります。 公的融資では「土地面積100u以上」「専有面積50u以上」など住宅に条件が付きます。民間ローンでは住宅の条件が少ない半面、借りる人の収入や勤務状況などが細かくチェックされる傾向にあります。
返済方法は「元利」均等と「元金」均等の2種類 ●返済方法による違いにみる元金と利息の割合
 住宅ローンの返済は金利が変わらなければ最初から最後まで毎月返済額が変わらない「元利金等返済」が一般的ですが、当初は利息の支払いが多く借入元金がなかなか減りません。一方、元金を返済期間で均等に割って返済する「元金均等返済」では当初の返済額は重くなりますが、返済が進むとともに徐々に軽くなり、元金も確実に減って総返済額も軽くて済みます。金融機関によってはどちらかの返済方法を選べるケースも多いので、検討してみるといいでしょう。 元利金等返済
元金均等返済
3.ローンの組み方
 ローンの組み合わせは固定金利の公庫融資や証券化ローンを基本に、足りない分を民間融資で補うというパターンが一般的です。 ただ、低金利の変動型を活用するなら「証券化ローン+民間」、「公庫+財形」などといった借り方もあり得るでしょう。土地面積100u未満の一戸建てなど、民間や財形だけで組まざるを得ない場合もあります。

固定金利は負担増のリスクゼロ、当初負担は短期固定が小さい
 現状の金利水準では、民間ローンの短期固定(または変動金利)が低く、固定金利の公庫・証券化ローン、民間の長期固定(固定期間10年以上のタイプ)はそれより高くなります。当初の返済負担を考えると、短期固定だけで借りるのが最も小さくて済むのです。ただし、将来金利が上がって返済負担が増えるリスクは、短期固定のほうが大きくなります。逆に固定金利は当初負担が大きくても将来の負担増リスクはありません。両者の中間として、短期固定と固定金利をミックスする方法もあります。
A 固定金利オンリータイプ
 固定金利の公庫融資や証券化ローンだけでローンを組むタイプ。当初の返済額は短期固定より多くなり、公庫融資の場合は11年目からの負担が少し増えるが、金利が予想外に上昇して負担が増える心配はない。年収負担率が25%を超えるなど目いっぱいの資金計画を組む人や、金利の動きに一喜一憂したくない人向けといえる。
B 固定+短期固定ミックスタイプ
 固定金利の証券化ローンと、短期固定の銀行とを併用するタイプ。金利上昇のリスクはなるべく避けながら、短期固定の低金利メリットもある程度は生かせる。 年収負担率が20%前後で多少の余裕がある人や、収入が今後増える見通しのある人、あるいは借りた後も金利を定期的にチェックできる人に向くタイプ。
C 短期固定オンリータイプ
 短期固定の銀行ローンだけを利用するタイプ。 当初の返済負担が最も少ないので、「しばらく金利は上がらない」と考えるなら利用価値は高いだろう。 あるいは年収負担率20%未満で返済に余裕がある人や、金利の動きに敏感な人、将来の収入増が確実な人など、金利上昇リスクに耐えられるなら利用価値も高い。
金利優遇キャンペーンが利用できることも
 都市銀行をはじめ銀行ローンでは、このところ金利優遇キャンペーンが盛んです。優遇内容は銀行によって差がありますが、いずれも給与振込口座の開設などを条件に一定期間(あるいは全期間)の金利を優遇するというもの。殆どのキャンペーンに申し込み期限がありますが、期間延長を繰り返すケースも少なくありません。
 優遇キャンペーンを使えば、低金利メリットがさらに大きくなります。ただし、優遇期間が終わると店頭金利が上昇しなくても返済負担がアップするので注意しましょう。
金利1%の差で負担はどれだけ違う?
 金利が低いと毎月返済額が少なくなるだけでなく、ローン残高の減り方も早くなります。下の表のような3,000万円を30年返済で借りた場合、金利が2%と3%とでは毎月返済額に1万5,000円以上、10年後のローン残高に90万円近くの差が出る計算です。住宅ローンで一般的な元利金等返済は返済当初の利息の負担が大きいので、当初の金利が低いほどローン残高が早く減り、将来の金利上昇による負担増を抑えられます。
●1%の金利差による違い       (3,000万円を30年返済で借りた場合)
金利 月々返済額 10年後ローン残高
2.0% 11万886円 2,191万9,252円
3.0% 12万6,481円 2,280万5,943円
4.利息負担を減らして総支払額を抑える
頭金を増やす ●頭金が足りない時のテクニック
 住宅ローンの負担を軽くする最も手っ取り早い方法は、頭金を増やして借入金を減らすことです。手持ち資金だけで足りない場合は、親から援助を受けるという方法もあります。
 親から住宅購入資金をもらうと、550万円または3,500万円まで贈与税がかからない特例制度があるのです。もらうのが気が引けるなら、親から借りてきちんと返済すれば贈与税はかかりません。また、共同で買っても共有名義にすれば、同居しなくても課税されません。
 提携トーンなどで価格の8割を超えて借りる方法もありますが、返済負担が多くなるのが難点です。或いは未完成マンションのように代金支払いまで期間があく場合は、その間に貯蓄して頭金を増やしてもいいでしょう。但し、入居後の暮らしも考えて、6ヶ月分程度の生活費を手元に残すことをお忘れなく。
 親に援助してもらう
 住宅購入時に親から資金を援助してもらうと、「住宅取得資金贈与の特例」が使えます。もらう額は550万円までなら無税で、それを超えても贈与税がグンと軽くなる制度です。特例を使って夫婦がそれぞれの親から550万円ずつもらえば、1,100万円まで無税で頭金を増やせます。また、相続税との精算を前提に住宅取得資金の贈与が3,500万円まで非課税になる相続時精算課税制度もあります。
 或いは借用書を交わして親から資金を借りれば、金額に係わらず贈与税はかかりません。

 共有名義にする
 親と共同で買うことにすれば、同居しなくても贈与税は課せられません。この場合、親と子がそれぞれ出資分に応じて住宅の名義を分ける、「共有名義」にする必要があります。例えば親が2,000万円、子が住宅ローンの借入金も合わせて3,000万円出資したとすると、親の名義が5分の2、子の名義が5分の3という割合です。なお、妻が自分の親から贈与を受けた場合も、その金額は妻の名義として夫婦の共有名義にします。

 8割超借りる
 頭金は価格の2割以上が原則ですが、2割未満でも不動産会社との提携ローンでは価格の90%〜95%まで貸してくれるケースもあります。或いは、カードローンや社内融資など無担保のローンで頭金を増やすという手もありますが、いずれにしろ借金が増えれば返済負担が重くなる点に注意しなければなりません。
短く組む 繰上げ返済をする
返済期間を長く組むほど月々の返済額は軽くなりますが、借入元金がなかなか減らないので利息の支払いが多くなって、総返済額は逆に重くなってしまいます。トータルの負担を軽くするなら、むしろ返済期間を短く組みたいところです。短く組めば早く返済が終わるので、退職後の老後資金も確保しやすくなります。
返済期間による違い
35年返済 25年返済
借入金 3,000円
金利 3.0%
毎月の返済額 11万5,455円
総返済額 4,849万1,100円 
借入金 3,000円
金利 3.0%
毎月の返済額 14万2,263円
総返済額 4,267万8,900円 
●35年返済と25年返済の総返済額の差581万2,200円
返済の途中でまとまった手持ち資金ができたら、繰上げ返済をすれば元金が早く減って利息の負担が軽くなります。繰上げ返済には返済期間を短くできる「返済期間短縮型」と毎月返済額を軽くできる「返済額軽減型」があり、返済期間短縮型のほうが総返済額の減り方が大きくなります。一方、返済額軽減型は翌月から毎月返済額を減らせるので、すぐに返済負担を軽くしたい人向けといえます。なお、繰上げ返済には数千円〜数万円の手数料が必要です。
年間のローン返済額を計算してみよう  
※例/2,000万円を変動金利(2.375%)の銀行ローン30年返済で借り入れる場合
毎月返済分の借入額
2,000万円  1,700万円
ボーナス時加算分の借入額 ※ボーナス時加算分は全体に対して、民間ローンの場合で5割未満、
公的融資では4割未満に抑えなくてはならない。
 300万円
●毎月返済額を計算する
 毎月返済分の借入額
100万円当たりの返済額 毎月返済額
 1,700万円 ÷ 100万円 × 3,886円 =  6万6,062円  ※1円未満は切り捨て
●ボーナス時の加算額を計算する
  ボーナス時加算分借入額
100万円当たりの返済額 ボーナス時加算額
 300万円 ÷ 100万円 × 23,398円 =  7万194円 ※1円未満は切り捨て
●年間の返済合計額を計算する
  毎月返済額
 6万6,062円 × 12回 =  79万2,744円
  ボーナス時加算額
 7万194円 × 2回 =   14万388円 
 +  =  93万3,132円
 
●600万円の場合のローン返済負担率
 93万3,132円 ÷ 600万円 × 100% = 15.6%
5.民間ローンの利用法
銀行や信託銀行など、金融機関ごとに様々なローンがあります。 それぞれ内容が違うので、自分に合ったものを選びましょう。
融資を受けるための基本条件
 都市銀行や地方銀行、信託銀行などの民間金融機関による住宅ローンのことを総称して「民間融資」「民間ローン」などと呼びます。 民間融資は住宅の種類や規模などによって融資条件が細かく決まっているわけではなく、購入物件の担保価値、個人の返済能力などによって融資額や返済期間などが異なります。一般的に公的融資より物件の条件は緩やかです。
 民間融資の商品内容は各金融機関によって様々な特徴があります。例えば都市銀行など銀行ローンの多くは、借りるときの団体信用生命保険料がかかりません。他にもローン保証料や繰り上げ返済手数料が不要なローンもあります。
民間ローンの種類 都市銀行、信託銀行、地方銀行、信用金庫など
利用できる範囲 新築や中古住宅、土地を購入したり、住宅を建設、リフォームするときなど
利用できる住宅条件 特に制限はない(金融機関によって異なる)
融資額
(基本融資額)
上限3,000円〜1億円程度。民間返済の割合は以下のとおり
(金融機関によって異なる)
●年収300万円未満/25%以内
●年収300万円以上400万円未満/30%以内
●年収400万円以上/35%以内
金利 短プラ連動型変動金利・・・金融機関によって異なる
固定期間選択型・・・借入期間、金融機関によって異なる
返済期間 最長35年(金融機関によって異なる)
金利の仕組み
 金利は変動型や固定期間選択型が主流ですが、一部の金融機関では固定型も扱っています。銀行ローンの変動型は金利が半年ごとに見直されますが、返済額の見直しは5年に一度です。金利が上昇して返済額がアップする場合でも、それまでの1.25倍までしか上がらないルールになっています。
利用するときの注意点
 民間融資を利用するときは、住宅ローンの全額を借りることもできるほか、公的融資だけでは足りない分を補うという使い方もできます。但し、ローンによっては公的融資と併用ができない場合もあるので確認しましょう。
 また、新築住宅購入の時など、不動産会社から紹介されるローン(提携ローン)を利用することで、頭金が2割未満でも購入できる場合があります。とはいえ、借入金が増えればそれだけ返済負担も増えるので注意が必要です。
 なお、金融機関によってはキャンペーンで金利を優遇しているケースもあります。優遇幅や適応期間などはまちまちですが、いずれも期限までに申込み、給与振込口座を開設することなどが条件です。ただし、優遇期間が終了すると金利が急にアップして、返済額が増えることも考えられるので注意してください。
★ 10年間で最高200万円が戻ってくる住宅ローン控除
 住宅ローンを借りて家を買うと、10年間にわたって年末ローン残高の0.5%〜1%に相当する額が所得税から控除される「住宅ローン控除」が利用できます。対象となるローン残高の上限は2,500万円で、控除額は1〜6年目が最高25万円、7〜10年目が最高12.5万円。10年間では最高200万円の税金が戻ってくる計算です。ただし納めた所得税額以上の金額が戻るわけではないので、実際の控除額はケースによって異なります。
 控除を受けるには一定の条件を満たしたうえで、買った翌年に確定申告が必要です。サラリーマンなら2年目以降の手続きは年末調整だけで済むので確定申告は不要です。
 なお、現行の住宅ローン控除が適応されるのは、平成19年12月31日までに入居した人です。入居が平成20年以降になると控除額が縮小される予定になっています。
住宅ローン控除の主な条件

●住宅の床面積50u以上(登記簿面積)
●築年数を問わず新耐震基準を
 満たしていることなど
●年間所得が3,000万円
 (給与収入金額で約3,336万円)以下
●控除を受ける年の12月31日まで
 住み続けること
●住宅ローンの返済期間10年以上
●対象となるローン残高は2,500万円まで
●平成19年12月31日までに入居すること